「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
遺産の詳細
エスナ:時と文化のタペストリー
ナイル川の西岸に位置し、ルクソールから南へ55kmの場所にあるエスナは、時の層を体現する都市です。ギリシャ・ローマ時代の遺跡で知られるエスナは、その考古学的な財産が古代エジプト時代からギリシャ・ローマ時代、ファーティマ朝、オスマン帝国時代、モハメド・アリー・パシャ時代にまで及びます。それぞれの時代が消えることのない痕跡を残し、エスナは人類の初期文明と文化的成果のモザイクを形成しています。
今日、エスナはその栄光の過去と、織物産業で知られる商業および農業の町としての現在の役割を両立させています。しかし、環境問題や住民のための基本的なサービスの不十分さなど、依然として課題が存在しています。特に、エスナの水門によって悪化した地下水位の上昇が懸念されています。この問題は、ギリシャ・ローマ時代のクヌム神殿の基礎にも影響を及ぼしています。
エスナの独自の位置と観光の可能性を認識し、この町の発展に向けた努力が始まっています。住民の生活の質を向上させ、環境の持続可能性を確保することを目指しています。2010年には、人口増加、観光、農業のニーズに対応しながらエスナの遺跡を保存・強化することを中心にした総合的な開発計画が提案されました。
この町の歴史は豊かに重なり合っています。古代エジプト人には「タ・セネット」として知られていたエスナの主要な寺院は、クヌム神に捧げられ、トゥトモス3世の治世にさかのぼります。現在の建物は主にギリシャ・ローマ時代の様式を反映していますが、18王朝の要素もまだ見ることができます。オーギュスト・マリエットによって発掘された神殿の柱廊ホールは、エジプトの天文学的な図像とローマの星座が描かれたユニークな天井で飾られています。ファサードにはローマ皇帝や上エジプトの神々のレリーフが描かれ、この町の歴史的深みを物語っています。
エスナのイスラム時代もまた豊かです。ファーティマ朝時代には、町は飢饉の中でも繁栄し、緑豊かな庭園と豊かな農業で知られました。エジプト最古のミナレットの一つであるエマリ・ミナレットもこの時代にさかのぼります。オスマン帝国時代には、エスナは活気ある商業の中心地となりました。エスナ寺院の北に位置する「ウェカレット・アル・ジェダウィ」は、アフリカと中東の商人が集う賑やかなハブとして機能しました。
カイサリヤ(屋根付きのショップ通り)は、地元の市場の中心でした。モハメド・アリー時代には、エスナの重要性が増し、美しい家々と繁栄したタルブシュ(フェズ帽)工場で知られるようになりました。
エスナの物語は、エジプトの歴史の豊かなタペストリーを形作る新しい章を明らかにする時を超えた旅です。その遺跡、市場、ミナレットは、世界中から訪れる人々を引きつけ続け、これらの素晴らしい都市を形作った過去を垣間見ようとしています。
作成日:2020年3月18日
更新日:2024年8月