「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
エル・クセイル旅行ガイド
エル・クセイル旅行ガイド:歴史と静寂が織りなす時を超えた旅
紅海沿岸に佇むアル・クサイール(Al Quseir)は、5000年の歴史を誇る古都であり、エジプトの永遠の魅力を今に伝える街です。古代には「レウコス・リメン(Leucus Limen)」と呼ばれ、アラビア語では「القصير」と表記されるこの街は、アル・クサイール(Al Qusair)、エル・クサイール(El Quseir)、コセイル(Qosseir)など、時代とともにさまざまな名を持ち、その豊かな歴史を反映しています。
プトレマイオス朝時代、この地は「ホワイト・ハーバー(白い港)」と称され、ナイル川に近い戦略的な立地により紅海の重要な港として栄えました。特に有名なのは、女王ハトシェプストが神秘の国「プント(Punt)」への探検隊を派遣した出発点であったこと。この伝説的な航海は、現代のエチオピア付近に位置すると考えられるプントから、生きたヒョウや香木を持ち帰り、ルクソールのデイル・エル・バハリ神殿の壁画に刻まれています。この探検は、エジプトの海洋交易史において特筆すべき出来事となりました。
16世紀には、アル・クサイールはオスマン帝国のスルタン・セリムが築いた要塞の地として重要な役割を果たしました。ここはメッカへ向かう巡礼者の出発地点であり、インドからイギリスへ向かうスパイス貿易の中継地としても賑わいました。
そして現在、アル・クサイールは静かなリゾート地へと生まれ変わりました。手つかずの美しいビーチ、色とりどりのサンゴ礁、透き通る海が、訪れる人々に穏やかな癒しを提供します。シュノーケリングやダイビングを楽しめば、紅海の神秘的な海中世界が広がります。
しかし、アル・クサイールの魅力は自然美だけにとどまりません。この街は歴史の宝庫でもあります。イギリスやフランスの影響を受けたコロニアル建築が街並みを彩り、古代のキャラバンルートは山々を抜け、ローマ時代やファラオ時代の遺跡を通りながら、ナイル川沿いのキフト(Qift)へと続いています。この道をたどることで、かつての交易商や旅人たちの足跡を感じることができるでしょう。
歴史に興味がある方には、アル・クサイール周辺の考古学的遺跡も見逃せません。ビル・ウム・ファワキール(Bir Umm Fawakir)の鉱山、広大なローマ時代の前哨基地であるモンス・クラウディアヌス(Mons Claudianus)、ワディ・ルスーマット(Wadi Russumat)に残る岩絵など、いずれも遥か昔の文明の記憶を今に伝えています。
今日のアル・クサイールは、モダンなリゾート地の快適さ—ビーチ、スパ、ホテル—と、エジプトの歴史的遺産への玄関口という二つの顔を持つ特別な場所です。ここでは、リラックスと探検が共存し、歴史のささやきが紅海の青い水面とともに響き渡ります。
もし、歴史の息吹を感じる海辺の隠れ家を求めているなら、アル・クサイールがその答えです。エジプト行きのフライトを予約し、この街の静けさと古代の魅力に心を奪われてみませんか?
作成日: 2020年4月28日
更新日: 2025年3月7日
エル・クセイル旅行ガイド

