「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
アミール・タズ宮殿
アミール・タズ宮殿:カイロの輝かしい過去へのいざない
サリーバ通りとスユーフィーヤ通りが交わる場所に佇むアミール・タズ宮殿は、中世カイロへと誘う壮麗な門として、この街の豊かな歴史遺産を象徴しています。1352年に建立されたこの優美な宮殿は、スルタン・カラウーンの息子にして、アル=ナースィル・ムハンマドの娘婿でもあった、タズ王子に仕えたマムルークの手によって設計されました。
アミール・タズ宮殿は、幾多の時代の波を受けながら、多彩な変遷を経てきました。17世紀には、エジプトの近代化を主導したイスマーイール・パシャのもとで大規模な改修が施されました。さらに19世紀には女子学校として生まれ変わり、カイロの教育史にその名を刻みました。その後、教育省の倉庫として実用的な役割を担ったこともあります。
近年になり、宮殿は大規模な修復作業によって往時の栄華を取り戻し、再び人々を迎え入れています。午前中は一般公開され、貴重な所蔵品や展示を通じて、その華やかな歴史を辿ることができます。夕暮れが訪れると、宮殿は文化の舞台として生まれ変わり、人気のエジプト・テレビ番組『アル=カスル』のロケーションとして賑わいを見せています。
アミール・タズ宮殿を訪れることは、エジプトが紡いできた歴史を深く体感する旅。宮殿の隅々までが権力と変容、そして時を超えた優雅さの物語を静かに語りかけ、単なる観光名所の枠を超えて、エジプト文明の歩んできた壮大な歴史の中へと訪れる人々を誘います。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月22日
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