「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
イブン・トゥールーン城塞
イブン・トゥールーン城塞:カイロの歴史風景に輝く時を超えた宝石
イブン・トゥールーン城塞の威容とは一線を画しながらも、カイロの歴史において欠かせない存在であるのが、イブン・トゥールーン・モスクです。オスマン様式が到来する以前に建てられたこの建築の珠玉は、ダルブ・アル=アフマルの南に位置し、ミダーン・サラーフ・アッディーンとシャーリウ・アッサルビーヤ沿いに広がる歴史的に価値ある地域に佇んでいます。このエリアには、カイロで最も壮大なモスクが2つ存在するほか、数々の重要な遺構が点在し、街の過去を今に伝えています。
興味深いのは、この南カイロの一帯が、北部の歴史地区に比べて修復や改装の手があまり加えられていないことです。そのため、イブン・トゥールーン・モスクは、ほぼ創建当初の姿をとどめており、現代的な手が入っていない分、その本来の雰囲気と建築美をより深く体感することができます。モスクを包む空気は、単なる歴史的空間を超えて、時間を遡る感覚を呼び起こし、カイロの古の鼓動を肌で感じさせてくれるのです。
このモスクは、エジプトのイスラーム遺産を語るうえで欠かせない記念碑であるだけでなく、歴史的建築の不朽の象徴でもあります。年月の流れにもかかわらず、ほとんど手を加えられることなく今日に至るその姿は、文化的・宗教的アイデンティティを空間として表現していた時代の精神を今に伝えています。壁やミナレット、中庭の一つひとつが、時代を超えた優美さと、揺るぎない強さの物語を紡ぎ出しています。
イブン・トゥールーン・モスクを訪れることは、まさに生きた博物館を歩くような体験。過去と現在の境界が溶け合い、カイロの語り継がれてきた物語と深く結びつく時間が流れます。これは単なる観光ではなく、石と精神に刻まれた文明の魂と出会う旅。古きと新しきが共存するこの街で、イブン・トゥールーン・モスクは、時を超えて輝き続ける美と文化の象徴として、今もなお人々の心を惹きつけています。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月22日
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