スルタン・カイトベイのモスクは、その名を冠した建造者の複雑な人柄を今に伝える貴重な証しです。強固な統治力を持ち、エジプト・マムルーク朝最後の偉大なスルタンとして知られるカイトベイは、一方で建築美に深い情熱を抱いていました。28年の治世の間に誕生したこのモスクは、そんな力強さと優雅さの融合を見事に表現しています。
1474年に建立されたカイトベイのモスクは、彼の命によって建てられた約80の建築物のうちの一つであり、カイロにおけるイスラーム建築の最高傑作と称えられています。その設計は機能性と芸術性が完璧に調和し、この街の建築美の王冠に輝く宝石のような存在です。
モスクの中央には静寂な中庭があり、それを取り囲むように4つのイーワーン(アーチ型の空間)が広がっています。窓には精巧な透かし彫りの格子が施され、内壁を覆う大理石は、落ち着いた色合いが訪れる人々の心を癒やします。また、天井の見事な装飾木工細工は、見る者を飽きさせません。ただ見るだけでなく、その美しさと静謐さに身を委ね、時の流れを忘れるほどの心地よさを与えてくれるでしょう。
モスク内にはスルタン・カイトベイ自身と彼の二人の姉妹が静かに眠っており、その墓所はこの場所に歴史的な深みを与えています。外壁に描かれた精緻なモザイク模様と花のデザインは、かつてカイロのみならずイスラーム世界全体で「究極の美」と称賛されました。冒険心あふれる方なら、ミナレットに登り、息をのむほど美しいパノラマの眺望を楽しむこともできます。この建築の傑作をまったく新しい視点から眺める絶好の機会となるでしょう。
スルタン・カイトベイのモスクを訪れるということは、単なる歴史巡りではありません。それは、マムルーク芸術の魂に深く触れる旅であり、そこにある石の一つひとつ、彫刻の細部に至るまでが、力と信仰、そして美への情熱に満ちた物語を雄弁に語りかけてくれるのです。