「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
シリア修道院
ワディ・エル・ナトゥルンのシリア修道院
シリア修道院は、エジプトのベヘイラ県ワディ・エル・ナトゥルンに位置する重要なコプト正教会の修道院です。その豊かな歴史と宗教的意義から、重要な霊的拠点として知られています。以下はその概要です:
所在地と名称
この修道院は、ワディ・エル・ナトゥルンにある聖ピショイ修道院から北西へ約500メートルの場所に位置しています。
正式には聖母マリアに捧げられていますが、歴史的にシリアの修道士たちが利用していたことから、シリア修道院として広く知られています。
創設の歴史
この修道院の創設は6世紀に遡り、アレクサンドリアのティモシオス3世教皇の治世にジュリアン主義異端が広がった時代に関連しています。
当初、正教会の修道士たちがジュリアン主義に対抗するために設立しましたが、その後、シリア商人に売却され、シリア修道士たちの中心地となりました。
中世期
この修道院は幾度かの攻撃を受けましたが、9世紀に再建されました。
修道士モーセ・オブ・ニシビスは、多くのシリア語写本を収集し、修道院の財産を大いに増やしました。
修道院にある「予言の扉」と呼ばれる象徴的な遺物は、キリスト教信仰の過去と未来を描いています。
その後の発展
12世紀にはシリア人司祭がいないことにより修道院は困難に直面しましたが、13世紀にシリア人難民が流入したことで状況が変わりました。
また、聖エフレムと聖ピショイにまつわる伝説がある「聖エフレムの奇跡の木」が、この修道院の注目すべき特徴の一つです。
近現代
修道院に所蔵されているシリア語の写本は、シリア語の言語と文化に関する重要な研究を促進しました。また、7世紀から13世紀にかけての壁画が発見され、修復・保存されています。これらはコプト美術の発展を示す貴重な文化財です。
建築的特徴
この修道院は、9世紀に建設された壁に囲まれており、塔や食堂が特徴的です。また、以下の5つの教会を有しています:
- 聖母マリアに捧げられた教会
- スケテの49人の長老殉教者に捧げられた教会
- 聖ホンノスと聖マルーサに捧げられた教会
- 聖ジョン・ザ・ドワーフに捧げられた教会
現在の状況
この修道院は現在も、キリスト教とシリア文化の重要な遺産を保存する、宗教的・歴史的研究の場として機能しています。
コプト教会の歴史やキリスト教修道制、美術史に興味を持つ学者や訪問者を引き付けています。
ワディ・エル・ナトゥルンにあるシリア修道院は、キリスト教修道制の不朽の遺産を体現しており、宗教、文化、美術の進化を反映する記念碑的存在です。その歴史的な写本や美術作品は、初期キリスト教とシリア文化の伝統を理解するための貴重な資料となっています。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月23日