「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
バルダウィル湖
バルダウィル湖:シナイ半島の神秘的な宝石
シナイ半島の北部、手つかずの美しい海岸線に寄り添うように広がるバルダウィル湖は、エジプトが誇る多様で神秘的な美を象徴しています。全長約30キロメートル、最も幅広い地点で14キロメートルにも及ぶこの広大な塩湖は、自然愛好家たちにとっての楽園であり、この地域の生態系において重要な役割を果たしています。
バルダウィル湖は、グレートビター湖やリトルビター湖と並び、シナイ半島の三大湖の一つに数えられます。しかし、時の流れとともにその姿は変貌を遂げつつあります。一時は広大な湖だったこの場所も、現在では次第にプレーヤまたはサブカと呼ばれる塩性平原へと変わりつつあります。この変化は、自然が織りなすダイナミックなキャンバスの一例であり、湖が次第に砂漠の抱擁に包まれていく様を物語っています。
湖の水深は約3メートルと浅く、地中海からはわずかな砂州によって隔てられています。ときおり地中海の水がこの自然の障壁を越えて流れ込み、湖の高い塩分濃度を維持しながら独特の水環境を作り出しています。
バルダウィル湖は単なる地理的な奇観ではなく、生態学的な宝庫でもあります。保護湿地を対象とする国際ラムサール条約にも登録されており、この湖とその周辺には多種多様な生物が生息しています。特に注目すべきは、シナイ半島の地中海沿岸に生息する種のうち30%がこの湖に生息している点です。その中にはコアジサシ(Little Tern)も含まれ、湖は鳥類学的にも非常に重要な地域とされています。
湖の多様な生息地には、開放水域、湿った塩性湿地、塩性砂地、安定した砂丘、そして移動性の砂地などが含まれており、6種の絶滅危惧種をはじめとする数多くの動植物が保護されています。その中には、イリスマリアエ(Iris Mariae)やエンドウ属のアストラガルス・キャメルルム(Astragalus Cameleroum)などがあり、この地域特有の植物相を形成しています。
また、湖周辺にはウミガメやハンドウイルカなどの野生動物も生息していますが、特にウミガメの死亡率が高いことが生態学的な懸念事項として挙げられています。
バルダウィル湖の歴史的意義も興味深いものがあります。湖は、ヘロドトスが記した「セルボニアン沼」に関連している可能性があると考えられており、これはダミエッタとカシウス山の間に位置したとされています。このような歴史的な繋がりにより、湖の生態学的重要性がエジプトの豊かな歴史的背景と絡み合っています。
さらに、ヘブライ人の出エジプトに関する一部の研究者は、バルダウィル湖が出エジプト記の「ピ・ハヒロト」(Pi-hahiroth)として知られる第4の宿営地の近くに位置している可能性を指摘しています。このような歴史的、宗教的な重要性が、湖の文化的および歴史的な魅力を一層引き立てています。
結論として、バルダウィル湖は単なる水域ではありません。そこには歴史、文化、そして自然が交差し、絶えず変化する風景、生物多様性、歴史的繋がりによって、エジプトの知られざる自然遺産と文化的遺産を探求する者にとって魅力的な目的地となっています。
2020年3月18日作成
2025年3月4日更新