「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
バラムス修道院(Paromeos Monastery)
バラムス修道院(Paromeos Monastery / Baramus Monastery) - ワディ・エル・ナトゥルン
バラムス修道院(Paromeos Monastery / Baramus Monastery)
バラムス修道院は、初期キリスト教時代に遡る歴史を持つ重要なコプト正教会の修道院 です。エジプト・ベヘイラ県のワディ・エル・ナトゥルン(ニトリア砂漠)に位置し、この地域の修道共同体の中でも特に重要な存在とされています。
この古代修道院の概要をご紹介します。
所在地と献堂
聖ピショイ修道院の北東約9kmに位置し、スケティスに現存する4つの修道院の中で最も北にあります。
この修道院は聖母マリアに献堂されています。
語源と創設
西暦335年頃、聖マカリウス(Saint Macarius the Great)によって創設され、スケティスの修道院の中で最も古いと考えられています。
修道院の名前「パ・ロメオス(Pa-Romeos)」は、「ローマ人のもの」という意味を持ち、ここに滞在したローマ皇帝ウァレンティニアヌス1世の息子、聖マクシムス(Maximus)と聖ドミティウス(Domitius)を指していると考えられています。
歴史的意義
この修道院は、聖イシドロス(Saint Isidore)や407年の襲撃で殉教した聖モーセス・ザ・ブラック(Saint Moses the Black)を含む、多くの初期キリスト教の聖人たちの霊的な避難所として機能しました。
5世紀初頭の襲撃によって破壊されましたが、後に聖アルセニウス(Saint Arsenius)によって再建されました。
構造の発展
襲撃への対応として、アレクサンドリアの教皇シェヌーダ1世(在位859~880年)の時代に修道院の周囲に壁が築かれ、現在もその一部が残っています。
この修道院の歴史は、多くの旅行者や歴史家によって記録されており、その発展の過程が明らかになっています。
現代の発展(Modern Developments)
現在、修道院には5つの教会があり、最も古い教会は聖母マリアに献堂され、聖モーセス・ザ・ブラックの聖遺物が安置されています。
また、修道院は数多くの改修と増築が行われており、リトリートセンターやゲストハウスも併設されています。
遺跡と考古学的発見
考古学的調査により、防御施設や教会の遺構が発見され、修道院の初期の建設と利用の様子が明らかになっています。
発掘調査では、修道院の複雑な歴史が浮かび上がり、古代エジプトの遺跡との関連性が示唆されています。
現在の指導体制
1992年以降、バラムス修道院の司教兼院長はアンバ・イシドロス司教(Bishop Anba Isidoros)が務めています。
バラムス修道院は単なる宗教施設ではなく、エジプトにおけるキリスト教修道主義の不朽の遺産を示す象徴です。その歴史的・文化的・精神的な重要性を持ち続け、巡礼者、歴史家、観光客を惹きつけ、初期キリスト教時代の姿を今に伝えています。
作成日:2020年3月18日
更新日:2024年8月