「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
アズハル・モスク
アズハル・モスクと大学の時を超えた威厳
カイロの歴史と文化が織りなす豊かな風景の中心に、アズハル・モスクは堂々とそびえ立ち、エジプトの深いイスラム遺産を象徴する存在として今なお輝きを放っています。970年に創建されたこのモスクは、カイロの地に最初に建てられたモスクのひとつとして知られ、当時新たに築かれたファーティマ朝の都市の中心的存在として計画されました。その宗教的・歴史的意義は、今も他に並ぶものがありません。
モスクのシェイフは、エジプト・イスラム社会において極めて重要かつ影響力のある存在であり、数多くの信仰者の精神的な羅針盤として尊敬されています。アズハル・モスクは、単なる礼拝の場にとどまらず、知の灯台として千年以上にわたりその役割を果たしてきました。
988年、このモスクの敷地に設立されたマドラサ(神学学校)は、後に世界で2番目に古い大学へと発展を遂げます。この学び舎は、中世イスラム世界のみならず、ヨーロッパの各地からも学者や学生が集まる知の聖地となり、国際的な学術拠点としてその名を馳せました。
現代においても、アズハル大学はスンニ派神学の中心としての地位を保ち続けており、その教育的威厳は世界中に知られています。大学の建築は、時代とともに幾度となく改築と拡張を重ねており、その姿自体が1000年にわたる歴史の重みを物語っています。
大学構内には、3本の壮麗なミナレットに囲まれた広々とした中庭があり、それぞれ14世紀、15世紀、そして16世紀に建てられたものです。この神聖な空間に、歴史上の重要人物スルタン・アル=グーリーの足跡が色濃く残されています。彼は中庭近くに自身の名を冠したモスクと霊廟を建設しただけでなく、3本目のミナレットの建設にも携わったとされています。
観光客にとって、訪れるべき見どころのひとつが中庭近くにある墓室です。ここでは、美しく装飾されたミフラーブ(メッカの方向を示す礼拝用のくぼみ)も鑑賞することができ、イスラム芸術の精緻な美に触れることができます。
アズハル・モスクと大学は、過去と現在が静かに交差する場所であり、信仰・歴史・学問がひとつに結びついた、エジプト・イスラム文化の真髄を体感できる特別な空間です。世界中の旅人を魅了してやまないこの聖地で、永遠の知と精神の旅を始めてみませんか。
作成日:2020年5月4日
更新日:2025年3月21日
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