「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
アル・グーリ廟
スルタン・アル・グーリー廟について
シャーリア・アル・アズハルを下り、カーン・アル=ハリーリ市場の向かい側へと歩を進めると、目の前に現れるのは、壮麗なるスルタン・アル・グーリー廟。その荘厳な姿は、ファティマ朝最後のスルタンの一人、カンスー・アル・グーリーが築いたふたつの建築的傑作がひとつに溶け合った、調和の美を体現しています。彼は16年間にわたりこの地を治め、その名を歴史に刻みました。
アル・グーリーの生涯は、壮麗さと悲劇が交錯するものでした。彼は78歳のとき、マルジ・ダービクの戦いで勇敢に軍を率いて戦場に立ち、無念にも捕らえられ、首をはねられるという悲惨な最期を遂げます。その裏には、彼自身の重臣による裏切りがありました。皮肉な運命のいたずらとも言えるこの出来事により、彼の遺体は歴史の闇に消え、現在もその行方は分かっていません。
この廟の静寂な空間には、アル・グーリーの記憶だけでなく、1517年にオスマン帝国がカイロを支配した際、バーブ・ズウェイラの門で処刑された最後のシェイフの魂もまた静かに息づいています。
日曜日の夜9時、この廟はふたたび命を吹き込まれたかのように生まれ変わります。空間を満たすのは、スーフィー詠唱の神秘的な響き。これは、アル・グーリーのウィカラ(商隊宿)で見られる旋回舞踊とは異なる、より内面的で瞑想的な儀式です。また、時にはヌビアの太鼓がリズムを刻み、エジプト音楽の奥深さと多様性を感じさせてくれます。
悲劇、信仰、芸術、音楽――それらが交差するこの場所は、ただの歴史遺産ではなく、今も生き続ける文化の舞台です。スルタン・アル・グーリー廟は、エジプトの物語に心を重ねたいと願うすべての旅人にとって、必ず訪れるべき場所であり、時代を超えて語り継がれる体験の場なのです。
作成日:2020年5月4日
更新日:2025年3月21日
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