「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
北の囲郭(ノーザン・エンクロージャー)
北の囲郭への旅路:歴史の壮麗さと建築の威厳が織りなすモザイク
時を超える旅へと誘う北の囲郭──その始まりは、16世紀に築かれた由緒ある門「バーブ・アル=クッラ」から始まります。この門は単なる入口ではなく、歴史の重みを感じさせる特別な時空の通路であり、カイロの過去と向き合うための象徴的なゲートウェイです。
門をくぐった先に佇むのは、かつての王族の贅を尽くした住まい「ハレム宮殿」。ムハンマド・アリー・パシャの建築的手腕を今に伝えるこの宮殿は、現在「国立軍事博物館」として新たな命を得ています。館内では、エジプトの輝かしい軍事の歩みをたどることができ、とくにイスラエルとの戦争を中心とした貴重な史料が展示されており、近代史におけるエジプトの重要な局面を学ぶ場となっています。
そこから少し歩くと、趣ある小道の先に「馬車博物館」が姿を見せます。規模こそ控えめながらも、かつてのエジプト王室が使用した豪華な馬車の数々が展示されており、王朝時代の華やかな日常を垣間見ることができます。繊細な装飾と優雅なフォルムが時代の美意識を語りかけてくれる空間です。
そしてこの歴史的な囲郭のなかでもひときわ目を引くのが、1528年に建立された「スレイマン・パシャ・モスク」。オスマン建築の壮麗さを体現するこのモスクは、クラシックな意匠が見事に融合した傑作であり、その造形美は、時代を超えて訪れる者の心を打ちます。
北の囲郭は、単なる建築群ではありません。それはエジプトという国の歴史が息づく“生きた物語”です。一つひとつの建物、一つひとつの石が、過去の物語を語り継ぎ、訪れる者に時代を越えた没入体験を提供してくれます。歴史と建築、栄光と変遷が交錯するこの場所で、あなたもぜひエジプトの重層的な時間を感じてみてください。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月22日
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