「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
ガイヤー・アンダーソン博物館
ガイヤー・アンダーソン博物館:エジプトの過去へと誘う扉
壮麗なイブン・トゥールーン・モスクの南端にひっそりと佇むのが、ガイヤー・アンダーソン博物館。かつては「ベイト・アル=クリトリーヤ(クレタ女性の家)」と呼ばれた歴史的な邸宅です。その名は、1935年から1942年にかけて二棟の16世紀の邸宅を丹念に修復した英国軍医にして熱心な美術収集家、ジョン・ガイヤー・アンダーソン少佐に由来しています。彼は生涯を通じて中東各地を旅し、収集した貴重な品々や芸術品をここに集め、唯一無二のコレクションを築き上げました。
1945年に亡くなる前、ガイヤー・アンダーソンはこれらの至宝をエジプトへと寄贈しました。館内には一つひとつの部屋がそれぞれ異なる魅力を放っています。ラッカー仕上げと金箔が輝く「ダマスカスの間」、壮麗な家具が並ぶ「クイーン・アンの間」、精緻なタイル装飾が美しい「ペルシアの間」など、訪れる人々を異国情緒漂う空間へと誘います。
この博物館の特筆すべき見どころは、繊細な彫刻を施した「マシュラビーヤ」のギャラリー。装飾が施された梁が美しい天井や大理石の噴水、カーペット敷きの居心地のよい小部屋があるレセプションホールを見下ろしています。この美しい内装は、映画『007 私を愛したスパイ』にも登場し、スクリーンを通じて世界的にも知られました。
最近の改修では、屋上テラスが新たに整備されました。ここからは、マシュラビーヤの複雑な美しさを間近に感じられるとともに、カイロの街並みが一望でき、他では味わえない景色が楽しめます。
博物館の向かいにある「カーン・ミスル・トゥールーン」のバザールでは、美しい手工芸品の数々が並び、散策するだけでも楽しめます。また、西へ750メートルほど進むと地下鉄駅もあるサイーダ・ゼイナブ地区があり、交通の便も抜群。エジプトの奥深い文化遺産に触れるのに最適な立地となっています。
ガイヤー・アンダーソン博物館は、単なる展示施設を超え、エジプトの歴史と芸術の精髄を隅々まで感じ取れる、時を超えた旅そのものです。
エジプトの博物館をさらに深く楽しみたい方は、各地の個性的な「エジプト博物館」巡りもぜひご検討ください。それぞれが、この国の豊かで魅力的な過去への入口となることでしょう。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月22日
カイロ旅行ガイド

