「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
ベニ・ハッサン
アル・ミンヤのベニ・ハッサン:古代の壮麗さの織り成す景色
エジプトの中心部、アル・ミンヤの南に位置するベニ・ハッサン。ナイル川東岸の高い石灰岩の断崖に影を落とすこの小さな村は、古代エジプトの歴史が息づく場所です。第11・12王朝時代、そして一部は第6王朝時代にまで遡るこの地は、岩をくり抜いて作られた墳墓の宝庫です。これらの墓はかつて地方統治者たちの安息の場であり、古代ナイル渓谷における独立した勢力の存在を今に伝えています。
歴史への階段
これらの墳墓にたどり着くまでの道のりはまさに冒険そのもの。急な石段を登ると、ナイル川の広大な渓谷を一望できる壮大な景色が待っています。崖に刻まれた39基の墓のうち、装飾が施されているのは一部のみで、その中でも現在公開されているのは、装飾付きの4基と装飾のない墓(BH18)です。これらの遺跡では、中王国初期特有の葬祭芸術を垣間見ることができ、そこには日常生活や娯楽、軍事活動が色鮮やかに描かれています。
型破りな安息の地
通常オシリスと結びつけられる西岸ではなく、東岸にこのネクロポリスが造られたことは、ベニ・ハッサンにさらなる興味深さを加えています。この地の調査と発掘の歴史は長く、パーシー・ニューベリー、ジョン・ガースタング、ニーナ・デ・ガリス・デイヴィス、そしてエジプト古物省による重要な研究が行われました。1980年代には、墓壁画が元の鮮やかな色彩に復元されています。
バケット3世の墓(BH15)
バケット3世の墓(BH15)は、第11王朝の後期にさかのぼり、地方知事としての彼の人生を鮮やかに描いています。狩猟、産業、そして余暇の活動が壁一面に広がり、中でも特に珍しいレスリングの場面が目を引きます。これらの描写は、バケットの生活とその時代を細かく記録したものです。
ケティの墓(BH17)
バケット3世の息子であるケティの墓(BH17)は、父の安息の地と同様の建築様式を持っています。その壁には、日常の活動が描かれた豊かな場面が広がっています。鳥狩り、収穫、地元の産業など、すべての光景がケティとその妻の見守る中、詳細に表現されています。
アメンエムヘトの墓(BH2)
第12王朝時代に造られたアメンエムヘトの墓(BH2)は、より複雑な墓建築への移行を示しています。中庭やポルチコを備えたこの墓は、農業、産業、軍事活動といったテーマの伝統を引き継ぎつつ、色鮮やかな壁画が施されています。特に、豊かな供物リストが大きく描かれているのが特徴です。
クヌムホテプ2世の墓(BH3)
クヌムホテプ2世の墓(BH3)は、その生き生きとした場面描写で際立っています。特に目を引くのは、アジア系のキャラバンの描写や、湿地での家族の親密なひとときの場面です。これらにより、ベニ・ハッサンの中でも最も魅力的で独特な墓の一つとなっています。また、クヌムホテプ自身の自伝的な文章や彫像の遺構が、この歴史的遺跡に個人的な温かみを与えています。
時を超える旅
ベニ・ハッサンを訪れることは、単なる墳墓の探索を超えた体験です。そこには古代エジプトの地方統治者たちの生活、信仰、そして芸術に迫る貴重な洞察が待っています。ナイル川を見渡す壮大な景色と緻密に描かれた墓の数々を備えるこの地は、エジプトの不朽の遺産と古代文明の複雑さを物語っています。
2020年3月18日に作成
2025年3月6日に更新
アル・ミンヤ観光ガイド

