「ようこそ」という言葉をこれほど頻繁に口にする国は他にありません。そしてエジプト人がその言葉を口にするたび、それは本心からの歓迎です。悠久の歴史を持つ古代エジプト文明が人々を魅了し続ける一方で、現代のエジプト人も同じように驚くべき存在です。
クヌム神殿
神秘的なエスナ神殿をひも解く
ナイル川西岸に位置するエスナは、ルクソールの南55kmにある農業の町で、ルクソールから出発するクルーズ船が立ち寄る最初の目的地として知られています。この町の中心には、魅惑的なプトレマイオス朝の神殿の遺構が残されており、訪れる人々を惹きつけています。
歴史的意義
エスナの古代名はイウニンまたはタ=セネットと呼ばれ、古典ラテン語ではラトポリスとしても知られていました。この神殿はプトレマイオス朝およびローマ時代に遡る遺構であり、古代エジプトで最後に建てられた神殿の一つでもあります。現在では地表から9メートル下の発掘坑に佇んでおり、その謎めいた姿が訪問者を魅了します。この聖域は、雄羊の頭を持つ神クヌムと、ネイト、ヘカ、サテト、メンヘイエトといった他の神々に捧げられていました。
建築の壮麗さ
もともと、エスナ神殿はエドフやデンデラの神殿に匹敵する壮大な建築を誇っていましたが、現在では柱廊式の広間のみが残されています。この広間はローマ皇帝クラウディウスによって増築され、以前の構造を強化したものです。現在見られる最古の部分は西壁であり、神殿の元々のファサードを成しており、プトレマイオス6世フィロメーターとプトレマイオス8世ネオス・フィロパトルのレリーフが描かれています。現在残る部分は、当初の構造の約4分の1の規模にすぎません。
細密な装飾
荘厳な柱廊の天井は今も健在で、24本の柱がそれを支えています。これらの柱には、町の宗教祭典に関する記述や、神々の前に立つ複数のローマ皇帝が描かれています。興味深いことに、ある柱には皇帝トラヤヌスが女神メンヘイエトの前で踊っている様子が彫られています。また、碑文に言及され、エスナの南にあるコム・メールで発掘された別の神殿が、この地域の歴史的豊かさをさらに引き立てています。
柱廊の北壁には、邪悪な精霊に対する勝利を象徴する伝統的なシーン、すなわち王が野鳥を網で捕らえる場面が描かれています。一方、東壁には、主にワニや雄羊の象形文字で構成されたクヌム神に捧げられたカレンダーが彫られています。入口近くの東壁には、小さな部屋が設けられており、これが司祭の装束を整える部屋か礼拝堂だったと考えられています。このような構造は、エドフ神殿にも見られる特徴です。
南壁には、セプティミウス・セウェルスとその息子ゲタおよびカラカラの治世に装飾が施され、複数の神々の前に立つ彼らの姿が描かれています。また、北壁と南壁の上部にはカレンダーが彫られており、これも注目すべき装飾の一つです。
星空を描いた天井と謎めいた中庭
柱廊の天井には、エジプトの天文図とローマの黄道十二宮の絵が混ざり合い、文化の融合を象徴しています。神殿の正面は当時の典型的な様式で、柱をはめ込んだスクリーン状の壁や、上エジプトの神々の前に立つローマ皇帝のレリーフが特徴的です。また、正面の基部にはナイル川の神々を描いたフリーズが施されています。
中庭には、比較的知られていないライオン頭の女神メンヘイエト(またはメンヒト)の像が静かに佇んでいます。メンヘイエトはエスナにおいてクヌム神の配偶神とされており、過去の守護者として訪問者を見守っています。
エスナ神殿は、その豊かな歴史、建築、神話の織り成す物語によって、訪れる人々を時空を超えた旅へと誘い、この古代エジプトの驚異に秘められた謎を解き明かす機会を提供しています。
作成日:2020年3月18日
更新日:2025年3月23日